こんにちは!放課後等デイサービスASTEP(アステップ)管理者(児童発達支援管理責任者)の水口幸代です。
ASTEPが開所をして1年が経ちました。多くの方に療育への理念や活動にご賛同いただくことができ、有難いことに定員いっぱいの状況となりました。
ご利用児童保護者さまをはじめ、いつも連携していただいている相談支援事業所の担当者さま、行政機関の皆さまに厚く御礼を申し上げます。
1年が過ぎ、地盤も固まりつつある中で、ASTEP(私)が考える療育『キャリアの形成を促進する療育(以下、キャリア療育)』を、今年から本格的に始動していきます。
※ホームページにも簡単に書かせてもらっていますので是非ご覧ください。
キャリア療育を行う上で、指導員自身が意識しなければならないことはたくさんあります(山のようにあります)
その中で今回は、子どもへの『叱り方の心得』をテーマにお話を進めていきたいと思います。
ASTEPでは、指導員に対し、日々の会議や研修の機会、叱るべき場面を捉えて『叱り方の心得』を指導しています。
好奇心や興味・関心、楽しさを感じるための活動の中で、叱るより褒める(認める)ことが大事であることは言うまでもありませんし、それは確かです。
それでも叱らなくてはいけない時というのは存在しますし、実際にASTEPでも場面に応じた『叱る』を行っています。
今回は、『叱る』が、なぜ必要なのかということを冒頭に解説し、ASTEPへの指導員に徹底している『叱り方の心得』について情報共有していきます。
忙しい日々を過ごされている親御さんや余裕の少ない親御さんにこそ読んでいただきたい記事となっておりますので、最後までお付き合いください。
立命館大学・政策科学部卒 卒業後、アパレル企業に就職
父が特別支援学校の校長であったこともあり、児童福祉の道へ進むことを決意
一児の母でありながら、2021年にASTEPを立ち上げ、仕事と子育ての両立を目指し、日々奮闘しています!
目次
叱ることが大事な理由
子どもがキャリアを形成する上で、私は幼少期や学童期に叱られる経験というものは、実はものすごく大事なことだと考えています。
子どもの頃に全く叱られずに成長をした子というのは、人の痛みが分かりにくい傾向があると言えます。
親や私たち支援者の言葉を通じてダメなことはダメであると伝えたり、時には体を使って良くないことを止めたり、それらの心と体の痛みの経験が、人の痛みが分かる元だと思っています。
親であれば躾(しつけ)、療育現場においては支援という形で、心の痛みを感じることはとても大切なことなのです。
そして子どもが社会に出れば、どんなステージにおいても叱られるという場面は嫌というほど存在します。
叱られてきた経験の少ない子どもは、叱られただけで挫折してしまうこともあります。
ですので、叱りすぎというのは良くないですが、”叱られた経験がある”ということは、子どもが社会自立する上での準備として大事なことだと思っています。
『叱る』の大前提
『叱る』の大前提を2点、抑えてもらいたいと思います。
- 叱ることで言うことを聞かせることはしない。
- 頻繁に叱ると効果はなし。
大人である私たちも人に強制されたことをするのは嫌ですし、子どもだって同じです。叱られたからやる…という形式上のものになってしまいます。
親や支援者が本当に習慣化させ、継続を望むのであれば…
叱るのではなく、自分からやりたくなるような環境を作ることが一番効果があると言えます。
そして、『叱る』というのは、奥の手として温存するべきだと言えます。
頻繁に叱っていると、子どもは叱られる事に慣れてしまって、ここぞという時に心に響かせることができなくなってしまいます。
そして、もう1点、抑えてもらいたいことがあります。それは…
- 叱ると怒るの違いを理解すること
簡単に言いますと、『怒る』は、親や支援者の感情がむき出しになっている状態です。自分の気持ちをスッキリさせたいという動機のもとの行動です。
一方、『叱る』は、親や支援者の感情があまり動いていない状態です。これは、子どものためを想って行われる行動です。
感情が抑えきれない状態で子どもへ向けて言葉を掛けていることは、ただ単に『怒る』状態ですので、気を付けてもらいたいと思います。
叱るの心得12ヶ条
では、ここからASTEPの指導員に対して日々指導をしている『叱る心得12ヶ条』について一つひとつご紹介していきます。
私たち指導員が全ての心得を徹底できているというわけではありません。ちなみに、私は『徹底』という言葉はあまり好きではありません。
徹底と言うのは100%という意味合いを持っています、療育に100%はあり得ませんし、私たち指導員も完璧な人間ではありません。
徹底という言葉を使うなら、日々指導員に対し、機会を捉えて指導を継続することを徹底しています。今後も継続していきたいと思います。
では、普段指導している内容をご紹介していきます。
叱る場面を決める
どんな場面かというと…
- 危険行為と迷惑行為
- 一般道徳に反することをした時
この2点にフォーカスをして叱ると決めておくことが、叱る上での基本となります。
むしろ、この2点だけ叱るのがベストだと思っています。
それ以外のことは叱るのではなく、諭したり、話を聞いてあげたり、子ども自身にしっかり考えさせるなどの方法で子どもに伝えていくと良いでしょう。
能力不足を叱らない
子どもの能力が不足していることで起きてしまったことは、絶対に叱ってはいけません。
例えば【足し算ができない、勉強を習慣化できない、テストの点数が悪い、、逆上がりができない】などです。
これらは全て子どもの能力的な部分です。
習慣化という能力については、意思の強さや判断力などの能力を必要としますので、これは叱ってはいけないことです。
叱る理由を伝える
叱るときに、「子どもだから…」「叱っても理解してくれないし…」という理由で、「〇〇はダメ!わかった?」と言われる方が多いのではないでしょうか?
これでは子どもの次の振る舞いを改善することができません。
ASTEPでは、叱る場面で子ども扱いすることはありません。理解が難しい子どもでも、分かる言葉ではっきり伝えたりする工夫をしています。
子ども扱いせず、しっかりと何がいけないのかを、理解できる言葉・形(視覚支援等)で論理的に説明する必要があります。
その積み重ねで改善できた例も多くあります。
とにかく短く叱る
長い時間をかけて叱るのはご法度です。
ASTEPとしての理想は、30秒~1分くらいです。これぐらいが理想です。
だらだらと、ねちねちと叱ると叱られるというマイナスの行為が、時間が長くなるほど子どもに悪い印象として心に残っていきますし、聞く気も失われていきます。
私も会社員時代に上司に叱られた経験が何度もありますが、「もう長いよ…」何度も思ったことがあります。結果、内容は覚えていませんし叱られた記憶しか残っていません。
話を蒸し返さない
「前も言ったよね?」「昨日言ったところでしょう!」と、今の事ではなく昔の事を引っ張り出して叱るのはご法度です。
今の事と関係のないことを蒸し返されると、子どもの頭の中はプチパニックを起こし、伝えたいことが伝わらなくなってしまいます。
また、蒸し返すことで、子どもに対し「前もやった」という気づきを与える言葉になるかもしれませんが、逆を考えると「前もして今もしてしまった」と何度も叱られている記憶がよみがえり、自己肯定感の低下にも繋がります。
前者のような子どもはそうそういません。ですので話を蒸し返すことをしないよう気をつけましょう。
人と比べない
これは叱る場面だけではありません。個々それぞれに能力値や特性も違いますから「〇〇君と同じ1年生なのに」などの言葉は使ってはいけません。
叱る場面においては「〇〇君はそんなことしないよ!」「お友達はそんなことしてないでしょ?」などと、人と比べる叱り方をすると、子どものプライドを傷付けてしまいます。
それが繰り返されると、子どもの自尊心を傷つけてしまう恐れもありますし、人と比べる価値観を持ってしまうので、大変危険な叱り方です。
行動・言動を叱る
叱る時はあくまで、行動・言動にフォーカスをして叱りましょう。
その時に大事なポイントは、子どもを主語にしないこと、これが大事なポイントです。
「〇〇君、だめでしょ!」⇔「いじわるをしたら、ダメでしょ!」
一目瞭然ですよね!子どもを主語に持ってくることで、その子どもの存在を否定することになります。
主語は子どもの名前ではなく、良くない行動・言動を主語にして伝えていきましょう。自分が悪かったのではなく行為が悪かった、という気づきを与えられることに繋がります。
叱った最後は仲直り
ASTEPでは、叱った後は「ちゃんと話を聞いてくれたね」「しっかり目を見てお話できたね」などのポジティブな言葉をかけながら握手をしています。
叱られたというマイナスなイメージで終えないことは、今後、子どもがプラス思考を身につけるためにとても大切なことです。
これは指導員だけではなく、お友達とのケンカでもそうです。お互いに納得した時点で握手をして仲直りというプラスイメージを作り上げるとともに、これが習慣化できれば社会に出たときに活きる能力になっていきます。
責任を感じている場合は叱らない
とっさにしてしまったこと(ふざけていて物を壊した、悪気なく危害を与えてしまった)などで、子どもが反省をしている様子があったときは叱ることはしていません。
このような場合は、叱るのではなく、この後の行動を子どもに考えさせる話に持っていきます。
例えば、謝りに行く、あとの始末は自分でする、などの適切な行動を促すだけに留めています。
してしまったことに対し自己責任を取ることで、社会に出たときに自立した心が育つチャンスになります。
叱るときは『今』
叱るときは、その行為をした『今』が良いです。
後回しにすると、子どもは忘れてしまっていることが多いですし、悪かったという意識も薄れてしまっています。
せっかくの『叱る』チャンスが、心に入って行きにくくなってしまうため、上手に叱るのではれば『今』を意識してもらいたいです。
叱る人を変える
何度も同じことで叱られている子どもに対しては、他の指導員(ご家庭であればお母さん以外の人)に叱ってもらうのは効果的です。
同じ人に叱られている子どもは正直、慣れてしまっていることがあります。
ASTEPでも、普段叱ることが少ない温和な指導員から叱られたことによって、一発で治ったという事例もあります。
問題行為の理由を考える
残念ながら叱る行為で子どもとの関係を悪くしてしまう方がいらっしゃいます。
その理由は単純で、子どもに「この人は僕のことを分かってくれていない」と思わせてしまっているからです。
子どもの問題行動には子どもからのメッセージが必ず隠れています。そのメッセージを考えずに叱ってしまうと、子どもとの信頼関係は崩れていきます。
大事なことは、問題行為に至った背景を考えること、よく観察をすることです。
ASTEPであったことで紹介すると、小学生の子ども2人が、活動でみんなで使う画用紙を勝手に持って行き、使ってしまった子がいました。
よく観察をして考えてみると、一生懸命に絵を描き文章を書いています。
実はこれは、大好きな指導員を喜ばせるために手紙を書いてくれたということが分かりました。
それは、叱る対象ではなく、心からありがとうと伝えた上で「次からは使うときに言ってほしいな!」と伝えました。
そういった背景を考えずに叱ってしまうと、子どもとの信頼関係は崩れていきます。
『どうしてこんなことをするんだろう?』と考える習慣を持つことから始めてください。
さいごに
さいごに『叱る』の本質をお伝えさせてもらいます。
子どもをなぜ叱るのか?という答えは、子どもの『意識レベル』を上げることだと考えています。
子どもが人を叩いたり、嫌がらせをしたり、これらを論理的に話して理解を促すことも大事かもしれません。
ですが、ほとんどの子どもはそれらが悪いということは理解をしています。
大切なのは『あなたは叱られるために生まれてきたわけじゃない』『あなたは人を幸せにすることができるんだよ』と、子どもの意識を底上げすることにあると思っています。
障がいのある子どもは成長するスピードもそれぞれにペースがあり、まだまだ未熟な人間ですし、間違ったことをして当然です。
私たち大人(親・支援者)の役割は、常に子どもの意識の底上げを意識して「私はこんなことをする人間じゃないんだ」と、子どもに思い直させてあげることです。
ASTEPでは、叱ったあとの決まり文句があります。
この言葉が『叱る』という行為で、子どもを底上げする最大限に効果のある言葉です。
ASTEPとご家庭での『叱る』ことの方針が一致できれば、子どもの意識の底上げも効果的になるものだと思っています。
これら12ヶ条を全て頭に入れて実践することは難しいかもしれませんが、できるところを選んでもらって1つずつ意識してもらえれば嬉しく思います。
お問い合わせはこちら