ASTEPの理念の1つに『子どもが元気になるには、親が元気でなければならない』このような理念を掲げて、療育支援を行っています。
この記事では、親御さんが元気になれる、また、前向きになれるようなテーマを設定し、メッセージとしてお伝えをしていきます。
今回は『親御さんからの苦情』についてです。
今回の苦情というのは、ASTEPを利用する親御さんからの苦情ではなく、知人の方が運営する事業所の親御さんからの苦情です。
ASTEPでも起こり得る話だな~と感じつつ、お話を聞く中で、私が思ったことをつらつらと綴っていこうと思います。
厳しい内容だと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、真剣に子どもさんと向き合いながら日々の療育活動に取り組まれている事業所であれば、実情から考えるとこれが本音なのかもしれません。最後まで読んでいただければ嬉しいです。
立命館大学・政策科学部卒 卒業後、アパレル企業に就職
父が特別支援学校の校長であったこともあり、児童福祉の道へ進むことを決意
一児の母でありながら、2021年にASTEPを立ち上げ、仕事と子育ての両立を目指し、日々奮闘しています!
100の直接支援は現実的ではない
私の知り合いが運営する事業所の親御さんからの苦情についての相談を受けました。
言いたいことはわかります。自分のお子さんに対して手厚い支援をしてほしいと思うことは誰であってもそうだと思います。
事業所側からすると「精一杯できることをやってます!これ以上は無理です!」と言いたいところでしょうが、何で無理なのでしょうか?
- 手のかかる子どもさんが多いから
- 指導員がいつも忙しそうだから
- 他児への個別療育などで人手がかかるから
理由としてはこんなところでしょうか?だから…
という結論になっているのだと思います。
この中の『手のかかる子どもさんが多い』というのは、合っているようで合っていません。
子どもさんには、それぞれに支援するところがあり、何に手がかかるかは親御さんにはわからないところです。
手のかかる子どもさんが、いわゆる『重度』でなくても、別な支援が必要であれば『重度』の子どもさんより支援が入っている場合もあります。
集団に身を置いているわけですから、そこは見えにくい部分かもしれません。
また、『指導員が忙しそう』というのは、どういったことなのでしょうか?支援の現場にいないということでしょうか。
これについてはASTEPの指導員にも当てはまる節があります。
子どもたちからの遊びの誘いがあるとすぐに現場に出ていきます。一区切りつくとすぐに事務室に戻り、事務仕事に打ち込んでいます。
ここで言う子どもと遊ぶというのは直接支援にあたり、事務室での仕事は間接支援にあたります。
その指導員は、いつも支援現場にいてほしくてもいることができない理由があります。
ASTEPの間接支援には、以下のとおり、これだけの仕事があります。
- 当日、翌日の送迎表の作成
- サービス提供実績記録表の作成
- 収支管理(おやつや自己負担金など)
- 併用されている事業所との連絡調整
- 予定している事業(活動)ができているか
- 子どもさんへの細部にわたる評価(日報)
- 人権に配慮しているか、虐待がないか
- 地域福祉の推進
- 相談支援事業所とのモニタリング
- ケース会議
思い当たる順に書いていきましたが、業務としては書き連ねることができないほどたくさんあります。
管理者である私で言えば、指導員の育成や指導員を労働者としてしっかり管理をできているか、行政(保健所・市町村役場)との連携など、するべき業務は多々あります。
つまり、思い描いている「指導員像」と違い、様々なことで時間を費やしています。子どもさんと直接関わり一緒にいることだけが仕事ではないのです。
お話は変わりますが、放課後等デイサービスの指導員は、いつもどれぐらい残業をしているかご存じでしょうか。
それが、毎日のことだという事業所も非常に多いのが現状です。残業しなければ、事務仕事(間接支援)が切羽詰まる状態の事業所も多いことだと思います。
また、頑張っている事業所ほど、なぜか残業も多くなる傾向にあります。
私は、残業はするべきではないと思っていますし、残業しないとなれば、支援中にも工夫(業務計画を立て、効率的に業務を行うこと)をして事務仕事をするべきだと話しています。
労働時間内に支援もして、事務仕事もして、会議もしてとするべきなのですが、昼休みがない事業所も当たり前のように存在しています。
実際に長期休み(夏休みなど)お昼をまたぐ日の場合、安全に食事ができているか、誰かしらが監督していますし、食事のサポートが必要な子は指導員が補助をしています。
子どもたちのためにできるだけ接していたいという気持ちから、事務仕事を残業でやりきる施設も多いのですが、労働者としては過酷になり、新たな問題として発展することさえ考えられます。
こういった過酷な労働環境の積み重ねが『福祉をやるのはもうやめよう』と思ってしまう一端となり、離職していく一番の理由になるのだと思います。
これこそ、福祉業界全体の課題なんですよね。
親御さんの立場からすると、子どもさんを支援する指導員が事務仕事で現場にいなくなることは嫌なのかもしれません。
それだけ、支援現場にいつもいることが当たり前のようになっている状態だからです。
そういった意味で言うと、100の支援は提供できないことになります。子どものいる時間に、どんな日であっても指導員全員が現場にいる状態は異常な状態だからです。
それでも親御さんが100の直接支援を望むのであれば、指導員は長続きしませんし潰れてしまいます。
そこでお願いがあります。
親御さんが思い描く最高の支援には、ご理解が必要です。
支援現場の裏側の間接支援も含めた部分にも気にかけていただきたいのです。
最高の支援を100だとすると、もう少しランクを落とさないことには均衡が崩れてしまいます。
裏側を知れば、100を望むべきでないことが理解できるかと思います。理想を少し落としてもらう、それだけです。
間接業務(事務仕事)なども含めて、それを100として考えていただきたいということです。
指導員が頑張っていないのではありません。頑張っているからこそ『もっと良い支援を』と望んでいる指導員も多いのですが、そういった指導員ほど、直接支援も間接支援(事務仕事)も、ものすごく一生懸命です。
もちろん、事業所側としても改善しなければならないこともたくさんあります。
実際に、ASTEPの間接業務(事務仕事)は、常勤それぞれに係業務として割り当て、一極集中しない形(分散)でバランスを保っています。
親御さんにおかれましては、最高の支援を希望しつつも、子どもさんを支える同じ支援者としての指導員の毎日の労働にも興味を持っていただけると嬉しいです。
そう考えると、今、この記事を読まれている親御さんのお子さまを支援しているの方々は最高レベルなのかもしれません。
最高の支援とはなんなのか?一歩引いたところから事業所全体を見ていただけると嬉しく思います。
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