ADHDは発達障害の一つで、「Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder」の略称です。
日本語では「注意欠如・多動性障害」と訳されます。
面白そうなことがあると席を離れて歩き出す、忘れ物が多い、順番を待っていられない…このような症状が特徴としてあります。
「自分の子どもがADHDかも?」と心配している保護者さんの中には、一人で悩んでいる方も多いと思います。
そこでこのメディア記事では、ADHDの子どもの特徴やよくある行動、関わり方について紹介しています。
詳しく見ていきましょう。
目次
ADHDの概要
「不注意」「多動性」「衝動性」
具体的な特性の現れ方には個人差があります。
コミュニケーションがうまく取れず、周囲に誤解されてしまうことも少なくありません。
一般的には7歳以前から症状が現れます。
知的な障害はなくても、行動に障害があるため、本人に学習の問題が生じたり、他の児童生徒に影響が及んで孤立やいじめなど二次的な問題を引き起こします。
また、他の発達障害と似た特性が多く、判断には注意が必要です。判断する上で押さえておくべきことは「自分の行動や感情を抑えることが苦手」という点です。
ADHDの原因は、生まれつきによる中枢神経の機能障害だと考えられています。
誤解されがちですが、親のしつけ方や育て方によって起こるものではありません。
ADHDの主な特徴
ADHDの特性は子どもなら誰もが持っている部分もあり、乳児期に判断することは難しいです。
しかし、乳児期から「寝つきが悪い」「視線が合わない」などの特性が見られる場合もあります。
ADHDの3つの特徴について見ていきましょう。
不注意
ひとつのことに集中することが難しいため、「忘れものや失くしものが多い」「気が散りやすい」という特徴があります。
その一方で、興味があることには集中しすぎてしまうことが多いのも特徴です。
他にやらなければならないことがあっても切り替えができず、場合によっては集団生活に馴染めないこともあります。
多動性
言動や行動をうまくコントロールできず、自分で抑えることが困難です。
無意識に言葉を発したり体を動かしたりしてしまいます。
一方的な過度のおしゃべり、落ち着いて座っていることが難しいなどの特徴があります。
衝動性
感情を抑えることが難しく、順番を待てなかったり人がしていることを、さえぎったりしてしまいます。
その行動をしてもよいかを考える前に体や口が動いてしまい、場合によっては乱暴と捉えられてしまうような行動をとることもあるでしょう。
ADHDの具体的な行動
- 常に体のどこかが動いている
- 外出先でどこかへ行ってしまい、迷子になることがある
- 高いところに登ろうとする
- 確認せず道路に飛び出してしまう
- 自分の順番がくるまで待っていられない
行動の特徴を場面別に見ていきましょう。
生活面
- 片づけが難しい
- 失くしものが多い
- 食事に集中できず、時間がかかる
- 食事をこぼすことが多い
- 自分の順番がくるまで待っていられない
コミュニケーション
- 自分の話をするために人の話を遮(さえぎ)ってしまう
- 人の話を最後まで聞くことが難しい
- 静かにしなければならない場所でも一人でしゃべってしまう
- 話の内容が飛んでしまうことがある
- 暴言や言い訳と捉えられる言動がある
- 相手にいきなり抱き着いてしまうことがある
遊び
- 次々に遊びが変わる
- 刺激の強い遊びを好む
- 部屋におもちゃが散乱してしまう
- 興味のある遊びをやめられない
- 新しいものをすぐ欲しがる
感情
- 少しのことでも人を叩いてしまうことがある
- 自分の気持ちを我慢することができない
- 興奮しやすく、大声を出してしまう
年齢別の具体的な特徴
年齢別の特徴を見ていきましょう。
1歳~小学校就学まで
小学校就学までの子どもは、他の子どもに乱暴をしてしまうことや、ものを壊してしまうこともあります。
また、癇癪(かんしゃく)を起こすことがあり、周囲の人を驚かせてしまうこともあります。
何度注意しても同じことを繰り返すため、「育て方が悪いのでは?」と不安になる親御さんも多いようです。
小学生
学校に通うようになると、特性が著しく見られるようになります。
授業中に歩き回ってしまう、忘れものや失くしものが多いなどが目立つようになるでしょう。
また、自分の感情をコントロールできずに大声で怒鳴ってしまうこともあります。
中学生~高校生
この時期には、ルールに従うことが難しく、親や先生に反発してしまうこともあります。
状況によっては、友達とうまく付き合えずトラブルになることもあるでしょう。
ADHDの子どもとの関わり方
ADHDの子どもと関わるうえで重要なことや注意点などをまとめました。
上記で紹介したADHDの特性を理解することが何よりも重要です。
ADHDの子どもは、決して怠けているわけでも人を傷つけようとしているわけでもありません。
自分自身も感情をコントロールできずに悩んでいるということを忘れないでください。
周囲からの理解を得られずに孤立してしまうことを避けるためにも、具体的な対処法を考えていきましょう。
環境の調整
「集中しやすい環境を用意する」「目に見えない暗黙のルールを目でわかるようにする」
などの、ADHDの子どもが生活しやすい環境を整えることで、困難を少しでも減らすことが期待できます。
ADHDの特性を生かして社会で活躍している人もたくさんいます。
そのためにも、子どもの特性に合った関わり方、生活の場を用意することが大切です。
コミュニケーションの取り方
- 伝え方
物事を伝えるとき、抽象的な言い方ではADHDの子どもに伝わりません。
「ちゃんとして」「ダメ」という言葉ではなく、「何をどうしてほしいのか」「なぜやってはいけないのか」を具体的に伝えるようにしましょう。
指示を理解できない場合は、イラストなどを使って伝える方法も効果的です。
また、本人のやる気を引き出すために、あえて守りやすいルールを作って自信をつけてあげることも効果的でしょう。
- 褒め方
ルールを守れたとき、良いことをしたときは、思いきり褒めてあげてください。
しっかりと目を合わせて「何ができたからえらい」というように、具体的に説明しながら褒めるようにしましょう。
達成感により自分を肯定する力が身につくはずです。
- コミュニケーションの方法
ADHDの子どもに対して、感情的に叱ったり他の子どもと比べるようなことを言ったりするのは良くありません。
できるだけ穏やかな口調で、一つ一つ具体的に注意するようにしてください。
また、最初の段階では、頑張れることを増やすために、何かができたらごほうびを与えるというルールを作ることもおすすめです。
- 親の関わり方
親の関わり方はADHDの子どもにとって非常に重要になります。
一番の理解者となり、できるだけ困難を感じることの少ない生活にしてあげましょう。
ADHDの特性は子どもによってさまざまです。
わが子の特性をしっかりと理解し、苦手なものを減らして得意なものを増やしていけるような環境を作り出してあげてください。
- 学校での関わり方
学校等での関わり方は、その後の社会生活に大きく影響します。
授業や活動に取り組みやすい環境を作り出すために、特性に合った工夫が必要になるでしょう。
たとえば、気が散りやすい子どもには余計な刺激をできるだけ少なくし、集中することが難しい子どもには興味を引き出す工夫をするなど、関わり方を考えてみてください。
また、座席は先生の近くにするなど、働きかけやすい環境にしておくことも必要でしょう。
- 周囲の関わり方
ADHDの子どもに見られる特徴は、周囲から誤解を受けやすいものが多くなっています。
「乱暴な子」「しつけのできていない子」というように受け取られることは、親にとっても非常につらいことです。
ADHDの子どもに関わる周囲の人たちは、子どもだけでなくその親が感じるストレスについても理解してあげることが大切になります。
まとめ
今回は、ADHDの子どもに見られる特徴やよくある行動、周囲の関わり方などを詳しくまとめました。
ADHDは脳の働きが大きく関わっており、簡単に治療できるものではありません。
しかし、さまざまなスキルを身につけることで、その子どもが持つ優れた能力を発揮できるようになる可能性もあります。
ぜひ、この記事を参考にして、ADHDの子どもとの向き合い方や見守り方、サポートの仕方を考えてみましょう。