こんにちわ!管理者兼児童発達支援管理責任者のみなぐちゆきよです。
今回はどこの事業所でも実施している「お誕生日会」についてご紹介したいと思います。
もちろんASTEPでも、毎月お誕生日会を行っています。
それは、子どもたちが生まれた一大イベントだから!ではなく、お誕生日会が子どもたちに及ぼす療育的効果が大きいからなんです。
療育の本質を捉え、意味や目的を持って行うと、お誕生日会がたちまち効果的な療育になります。
その月(参加者)によって内容は異なってきます。今回は6月のお誕生日会をご紹介していきたいと思います!
目次
お誕生日会を療育化した経緯
私が独立をする前、児童指導員として勤務していた頃、こんなことに疑問を抱いていました。
「毎月誕生日会をしてるけど、内容が一緒…」
意見を具申したことも何度かありましたが、やはり事業所の方針を大きく変えることができませんでした。
療育施設でお誕生日会を開催するなら、療育的効果が期待できるお誕生日会(行事)を行うべきではないのか…素直に考えるまでもなく必然なことですよね!
誕生日イベントのブログを数えきれないほど拝見をしましたが、書かれているほとんどは「楽しく」「笑顔で」「盛り上がる」というもの。
でも、お誕生日会は、「笑顔で楽しく大盛り上がり」というのは大前提のお話なんですよね。
楽しいを前提に様々な療育的効果を見出しすことが、お誕生日会を開催する意義なのでは?
その意義を保護者さんを含め事業者さんに対しても、多くの方に知ってもらいたい思いもあり、本記事を執筆しています。
独立して、かけがえのない子どもたちをお預かりしている今、私の責任は「子どもたちの成長の一助となる」ことです。
子どもたちに無駄な時間を過ごさせることは許されません。
プログラムの立案の基礎
利用児童において、大人数での行事等の経験が乏しい児童が散見される。誕生日会を開催することで、自身が祝われる気持ちを知り・他児を祝う気持ちや手段を知るとともに、様々な行事(冠婚葬祭等)に参加する姿勢や態度、耐性を身につけることを目的とし、本活動を立案する。
噛み砕いてご説明をすると、参加児童は学齢が低く(小学校低学年)、多数が集まる行事での見通しがつかず、どういうアクションを起こせばいいのか分からずにいる子がいます。
お誕生日会という行事を通して、心の変化(祝う気持ち・祝われる気持ち)を伴う感情を、言葉や表情で表現することを促し、行事に参加する上で身につけておきたい姿勢や態度を知ることを目的として行いました。
活動の目的(ねらい)
お誕生日会のセクション(時程)ごとに、療育の目的(ねらい)を持って進めていきます。6月のお誕生日会の狙いについてはこちらです。
【開催前の序言】
周りの状況を理解し、場に合った姿勢・態度の必要性を知る。
【セクション全般】
場面の切り替えに対する耐性を養う。
祝う気持ちをもつことで、他児への思いやりの心を育み、祝われることで、感謝の心を育む。
【開催後の結言】
生まれてきたこと自体が特別、自分はかけがえのない存在であることを知る。
活動の到達目標
個人の特性、学齢等を鑑み、それぞれの立場で到達目標を設定しています。望成目標(達成が望ましい目標)と必成目標(必ず達成したい目標)で分けて設定しています。一部抜粋してご紹介しますね。
【共通目標】
A:時程ごとに気持ちの切り替えを行い対応できる。(TPOに沿った態度・行動ができる。)
B:職員の声掛けにより、自ら気持ちの切り替えを行い対応できる。
C:気持ちの切り替えを促し、職員と共に活動に参加できる。
【祝う側】
A:自ら他者の気持ちに気づき、拍手や声掛けをして共に喜ぶことができる。
B:職員の声掛けや表情から、楽しさや嬉しさなどの気持ちに気付くことができる。
【祝われる側】
A:周りの気持ちを素直に受け止め、言葉にしたり、祝われる気持ちの本質を理解できる。
B:祝われる気持ちを感じ、表情や行動、態度で感情を表現できる。
活動の詳細
簡単ではありますが、6月のお誕生日会の活動の概要についてご紹介します。かなり端折っているところもありますが、ざっとこんな流れで実施をしました。
項目 | ||
---|---|---|
序言 | 活動の時程や約束事を分かりやすい言葉を選びながら伝える。 【約束事項】 ・話している人の顔を見ること(聞く姿勢・態度) ・誕生日の人に「おめでとう」の言葉を掛ける。 ・言われた誕生日の人は「ありがとう」の言葉を掛ける。 ※言葉を掛ける意図は活動内で理解を促す。 |
・お誕生日会の目的の概要の理解 ・内容を質問しながら、理解度を確認 ・表情や挙動を観察、理解不足の児童に対し、適宜個別に対応 |
活動 | ①誕生日会の開催宣言 ・祝われるとどんな気持ち?祝う側はどんな気持ちで祝う? ・祝われる・祝うと嬉しくて幸せな気持ちになることを伝える。 ※SST・LSTの要素を含め、感情の変化を主旨にした内容で実施 ②出し物 ペープサートでの寸劇(ノンタンの誕生日を参考)実施後、祝うときに言う言葉、祝われる時に言う言葉(それに対する気持ち)を考える。その際子どもに質問を投げかける。 ③誕生日ケーキ 手作りのミルクレープを事前に準備(切り分け作業は割愛)演出の理解について、ブラインドを下げ部屋の明かりを下げ、BGM(誕生日曲)を流し、ケーキの登場、児童はろうそくの火を消し、盛大に拍手 ④お誕生日のお友達から一言 どんな1年にしたいか?今の気持ちは? ④祝ってあげたお友達から一言 祝ってあげた今気持ちは?言葉の掛け合いで沸き上がった気持ちを皆の前で発表 ⑤プレゼント贈呈 あらかじめ職員で製作した誕生日カードを児童に渡す役割を与える。その際「おめでとう!」の言葉を掛ける。 |
・集団への参加(集団にいない子どもへの声掛け) ・イメージしやすいように、絵カードを使用して誕生日会で起こる気持ちを学ぶ(シンプルな言葉で) ・喋っている人の顔を見る、注意喚起 ・皆の前で気持ちを発表する際、言葉の引き出しが少ない児童への配慮(必要に応じ代弁) ・プレゼントを渡した気持ち、貰った気持ちの確認 |
結言 | ・今日は祝われて・祝ってあげてどうだった?感情の変化の確認と。気づきの言葉の発表 ・後片づけ・清掃 |
・話を聞く姿勢と態度 ・気づきの発言ができるよう促す。 ・再度、その理由について振り返る |
活動の評価
6月のお誕生日会に参加した児童の評価をご紹介します。
- “Happy Birthday”の歌をみんなで歌っているとき、拍手をしているみんなの様子を見て、一緒に拍手をする場面が見られた。少なからず「誕生日会は楽しいもの」と認識できるようになった。本活動を契機に「活動は楽しいもの」と幅を広げていけるよう、職員側の演出などのこだわりも必要であると感じた。
- お友達からの「おめでとう!」に対し「ありがとう!」としっかり応える事が出来ていた。できたことを職員にアピールする姿も見られた。
- 職員の出し物では、主人公の気持ちに対する自分の意見が言う事も出来ていて、集団の中で自ら考え意見が言えている。今後は意見の質や、人を惹き付けるスキル(声量や速さ)を少しずつ身につけていきたい。
- 職員が介入しながら、お友達に対して「おめでとう!」と言える。言葉の幅も少しずつ広げていきたい。
- ペープサートでの感情の変化(冷たくしていたのは実はサプライズ)を理解し、自身も「お母さんにサプライズする」と言う。人を喜ばせる方法は直球だけではなく変化球もあることを知れた。
- プレゼントを渡す役割の児童が、お辞儀をしながら「おめでとう!」と言葉掛けしながら渡す。(職員の指導ではない!)小学校2年生にして「マナー」が自然と身に付いている。それにつられるかのように渡された側も深いお辞儀を行う。良い影響力が波及している。そのような良い面を更に伸ばせるよう、お辞儀の意味や仕方についても学ぶ機会を集団または個別に設定する。
さいごに
この日のお誕生日会で、「感謝の気持ち」を知れたかというと決してそうではありません。
日常の中にもたくさん感情の変化を知れる場面は存在します。
そういった場面で自分の感情としっかりと向き合えるように行事を活用した療育を行っているのです。
継続した療育の中で起こる経験による気付きがあって感情や気持ちの成長が見込めるものであると考えています。
私がブログで詳細にお伝えをする理由は、冒頭でもお伝えしている通り、1日の大半を子どもたちと関わるご家族や、他の事業所で過ごされている子どもたちの親御さんへお伝えをして、目的を持って関わりを持ってもらいたいという思いで発信しています。
ブログで「お誕生日会をしました、こんな様子で、こんなゲームをしました」だけでは、ただ楽しい雰囲気を伝え、事業所を利用してください!と言わんばかりの集客ブログになってしまいます。
お伝えしている通り、事業所での関わりも大事ですが、家(親子)での関わりが最も大事です!
事業所での関わりの中でヒントを得て、家庭や生活の中で実践することで定着を図れるのです。これは断言します!
ASTEPが連携を密にしている理由はそこにあります。(学校-家庭-事業所の繋がりを療育のトライアングルと呼んでいます。)
これから夏本番ということで、バーベキューや水遊び、お祭り(コロナ禍なので中止だと思いますが…)に行く予定をしているご家族さんは、是非「楽しい!」以外の目的を持ってお子さまと関わりを持ってみてはいかがでしょうか。
ご参考となれば幸いです(^^♪
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