「発達障がいの子どもは性欲がない」などの誤解があったり、親御さんは、日常生活に追われて性の問題まで考える余裕もなく自慰行為をしているお子さまに手が回らなかったり…こういった現実はご家庭や福祉の現場において、ある意味「黙認」されている風潮にあることが現実です。
眠くなったら寝る、お腹がすいたら食べる、おしっこがしたくなったらトイレで用を足す…性は、人間が行う基本的欲求なのです。
性への意識はなくとも、性器を晒したり、無意識に自慰行為をする子どもさんに対しどのように対応をするのか?親御さんのための子どもの「性」を考え、どのような方法で性について向き合っていくのか?
本記事では、発達障がいの子どもの性教育①「性器いじり・自慰行為等の対応編」ということで、問題に対する原因、その対応の仕方についてまとめました。
目次
性器いじり・自慰行為の原因
ズボンの中に手を入れたり、角(机やイス)に股をこする等の行為が見られることがあります。また、親御さんに抱きついて局部をこすりつける例もあります。
お子さまの性格や特性等によって異なりますが、早い子どもさんで幼稚園や小学校低学年ほどで自慰に目覚める子もいます。特に、男の子は、比較的低年齢から自慰行動が見られることが多いです。
どうして性器を触ったり、こすりつけるの?原因はどこにあるんだろう?
それは、性器の痒みであることがほとんどだよ!
じゃあ、なんで性器が痒くなるの??
それは単純に、性器をしっかり洗えていないから!
痒みがきっかけで局部が気になり性器を触ることで、癖になったり、延長として自慰行為に繋がることがあります。
そもそも自慰行為うんぬんではなく、単純に性器が痒いのです。したがって性器いじりや自慰行為を注意したり気を逸らしたりする方法は、行為が見られ始めの段階ではあまりおすすめできません。
まずは、性器を清潔にする
男女問わず、性器を上手に洗えるように、しっかりと大人(親)が指導してあげなければいけません。
例えば、男の子の場合、異性である母親(女性)が教えてあげられるのは、小学2、3年生頃ではないでしょうか。それを過ぎたら、その役目は父親(男性)が教えてあげることをおススメします。
とは言っても、実際に子どもの性器を手に取って洗ってあげるというのは、けっこう難しいものです。
そんな時は、父親が洗っているところを見せたり、物を性器に見立てて説明してあげるとわかりやすいです。
女の子にも同じように、性器をうまく洗えていなくて、中には汚れで白くなっている子もいます。膣部分は自分でキレイにする力があるので、それより前の部分をよく洗うように教えてあげる必要があります。
自慰行為をしても良い場所・時間
自慰行為はしても良い。なぜなら前述したとおり自然の行動なのですから。
男の子も女の子も、性器に触ることは、清潔であるならば良いんです。
ただし、しても良い場所や時間を決めることが大切です。
人前ではパンツを脱いで性器を出さない。
自分の部屋のベッドの上だけにする。
このようなルールを設定して守らせることが非常に重要です。
しかしながら、自慰行為や性的な行動は個々によって様々なケースが考えられるため、一概にはこう!という答えはありません。
ケースごとに解説していきます。
考えられる対応としては、兄に鍵を閉めるよう約束する。また、時間(例えば5分)の制限を設け、本人の好きなようにして良い時間を設定した。
結果、1人の時間であっても、トイレ以外の場所で性器いじりすることがなくなった。
しかしながら本当の理由は、体操服についているネームワッペンをじっと見つめていました。女の子の名前の字がお気に入りであることが判明し、男の子ははそれを見ていただけだったのです。
理由、原因、それは、性とは全く関係のないことにあることがあります。原因の決めつける事には注意しないといけません。
気を逸らす活動を用意する
別の活動を用意する、気をそらすことも必要かと思います。暇な時間に何をして良いかわからず、時間つぶしが体に向かってしまうことも原因として考えられます。
そういう時間に、何か打ち込めること用意してあげることをしてください。
ただ、そう簡単には言いますが、なかなか難しいです。
余暇の充実や好きなこと探しにもつながりますが、1人の時間を楽しく過ごせるようになるように、徐々に訓練が必要です。
ここで大切なことは、性器いじりなどの問題行動をしていない時は、”とにかく褒める”、このことを念頭に挑戦してください。
身体接触の線引きの提示
男の子であれば、母親の胸を触るなどの行動が見られるお子さまも多いかと思います。
まだ小さいうちであれば可愛いで済まされますが、大きくなってきて母親や母親以外の女性にそのような行為が出ているのであれば問題です。
どうして、子どもが胸に触るのか?
その理由も、実は性的な欲求で行っているわけではない可能性が高いのです。
多くの子どもは、親をはじめ人(女性)対して接近を求めている、ただそれだけな場合があります。
気持ちが良いからプニプニしたい、そういう感覚を求めているだけである可能性が高いです。
したがって、プニプニしてもいい線引きをしてあげることが大切です。
このような形で、胸は✕、その他指定した箇所は〇、という線引きを明確に示してあげることで改善されることがあります。
それでも触ってくるのであれば、頑なに「ダメ!」と伝えるのではなく「お母さんは、胸を触るのをやめてほしいなー?」と一人称を入れたり、表情での伝達も意識しながら実践してください。
嫌な時、悲しい時、うれしい時など、発達障がい(特に自閉症)の子は相手の気持ちを理解することが難しい時があるので、上手く伝わることが多くなります。
さいごに
いかがだったでしょうか?性器いじり・自慰行為の原因については性の芽生えではなく、実は思わぬところに原因があることが理解できたと思います。
また、お子さまの問題行動に対する原因も、性的な要素だけではなく、その子自身のこだわりが原因であったりすることもあります。
性器いじりや自慰行為を行う子どもに対し、頭ごなしに「だめ!やめなさい!」というのは効果的ではありません。
まずは、その行為の背景を探りながら、子どもの特性等を踏まえ、適切な分析を行ってあげてください。
その分析に当てはまる対応の仕方というものが必ず存在します。
性的な行動というのは人間である以上それはごく自然なこと、しかし、社会で生きていくためには良いこと悪いことを選別できる力を身につけなければなりません。
次の記事は、発達障がいの子どもの性教育②「性への関心とコントロール編」です。また、月経を迎える女の子や中高生の性について解説をします。
お問い合わせはこちら