放課後等デイサービスASTEP、児童指導員のみなぐちだいすけです。
久しぶりのブログに登場ですね。今回登場した理由、それは「応用行動分析(以下、ABAという。)」についてご認知いただくためです。
ASTEPでは、開所から現在まで、ABAを取り入れたアプローチを行っています。
一定の知識があれば、誰でも実践できる内容になっておりますので、是非ご家庭でも参考になればと思います。
ABAが、発達障害の子どもへの有効性が広く認められた方法であることは以前から認知していました(基礎・応用心理学を修士しています。)
しかし、大学の講義での知識でしかなかったため、一から勉強し直して子どもたちの成長の一助となれるよう取り組んできました。
ABAを、皆さまにご認知をいただくとともに、ASTEPで実際にABAを活用したアプローチの評価についても紹介しておりますので、是非、最後までお付き合いくださいね!
目次
ABA(行動応用分析)を取り入れた背景
ASTEPでは、障がい種別における一般的特性を踏まえつつも、個々の性格や特長に焦点を当てたアプローチにより成長を促す方法で療育を行っていることは、すでにご理解をいただいているかと思います。
さまざまな特性をもつ子どもたちを支援する療育(発達支援)において、スタッフの勘と経験のみで関わることは、避けなければいけないことだと考えています。
後ほど解説をしますが、支援の全ての場面において、この考え方(ABA)を持って関わることが、非常に効果を期待できるものと結論付けたため、ABAを取り入れるに至りました。
ASTEPの職員や私自身も、固定概念からの知識や経験、勘を頼りにしている場面は少なからずあります。
だからこそ、常に学ぶことで頭の中をアップデートをする作業をしないといけませんし、それを面倒に感じた時点で子どもたちの成長は見込めず、ASTEPに来ることが時間の無駄となってしまいます。
論理的思考が必要となり、物事を多角的に見通す能力がなければ、実践することは難しいですが、ASTEPの職員はしっかりついてきてくれていますし、活動を通して積極的に活用できています。
ABA(行動応用分析)とは?
応用行動分析は、英語で『Applied Behavior Analysis(ABA)』と呼ばれる1つの心理学です。
その特徴は、人の「心」を対象とせず「行動」に着目するという点にあります。
行動に着目することから、言う事を聞かない子、こだわりが強い子、言葉の扱いが未熟な子に対して、最も効果を発揮するというエビデンス(根拠)があります。
詳しく説明していきます!
自閉症の子の知能や社会性は改善できる
「行動」には、思考が伴うため先天的な部分があるものだと考えられがちですが、多くの行動が後天的に自身の経験により学習されたものであるので、「行動」において、学習が可能なものだとABAでは捉えられています。
発達障害の子どもたちが言葉を発しなければ、積極的に関わりの中で言葉をの引き出し増やし、友達と関わりを持つことが苦手なのであれば、関わり方や遊び方を教えます。
一見すると、障がいの本当の原因にアプローチしたものではないように見えますが、こうした1つ1つのアプローチにより学んでいくという手法こそが、ABAが、発達障害児の知能・社会性の改善に大きな効果をあげている理由だと言えます。
自閉症に有効な治療法はある?ない?
結論から言うと、あります!
ABAの効果は、世界中の大学・研究機関での長期にわたる研究データによって実際に証明されており、非常に科学的で信頼性の高いものであると言えます。
特に「ABA早期集中療育」という方法は、自閉症の症状の改善に画期的な効果を上げて注目されています。
もちろん、ABA早期集中療育を受けた子どもがみんな普通学級に行けるとは限りませんが、多少の差はあれど、すべての子どもの成長を促すことができます。
それは、ABAが、ヒトをはじめすべての動物に共通する「行動の基本原理」に基づいた、科学的な行動アプローチ法であるからだと言えます。
ASTEPでの実践例
基本的には、上図のように「ABC分析」と呼ばれるフレームワークを基に問題行動の原因、結果を整理していきます。
ある行動が起きたときに、その行動前の出来事と行動後の結果に注目し、行動をコントロールしようとする考え方です。
ABAの考え方には「消去」と「強化」があり、場面に応じてアプローチの方法が違ってくるので、ASTEPで起きた事例を挙げて分かりやすく説明します。
「消去」によるアプローチ
「消去」のアプローチについて、ASTEPの実践例を交えながら解説をしたいと思います。
おもちゃを投げるという行動の前後に、以下のような出来事がありました。
- A(行動前の出来事):友達とおもちゃの取り合いをした
- B(実際の行動)おもちゃを投げる
- C(行動後の結果):友達が諦めてその場を離れる
「おもちゃを投げる」という行動後の結果、友達が離れていくという良い結果を生み出すことができませんでした。
ここでのアプローチ(声掛け)として、投げた行動に対してどうだったか議論すること。大好きなお母さんが他の人にものを投げられて怪我をしたらどう思う?などと言った自分以外の大事にしている人やモノに置き換えてお話をするとイメージしやすくなるので非常に有効的でした。
こうした良いことではない結果を招く行動を取ったときのアプローチにより、最終的に減っていくと考えるのが応用行動分析学の「消去」です。
最終的に、問題行動を起こした子は、物の取り合いをすることはありますが、物を投げる行動は見られなくなりました。
「強化」によるアプローチ
続いて「強化」のアプローチについて、ASTEPの実践例を交えながら解説をしたいと思います。
後片付けという行動の前後に、以下のような出来事がありました。
- A(行動前の出来事):早々に食べ終わり、他の友達とボール遊びをする
- B(実際の行動)おやつの後片付け(ゴミ捨て・机運び・机拭き)
- C(行動後の結果):友達の前で大々的に褒める。
アプローチのポイントは、子どもたちの前で大々的に褒める事です。
片付けそのものの行動ではなく、ボール遊びをしているのにも関わらず、周りの行動や雰囲気を察知し、楽しい行動(ボール遊び)を捨て、しなければならない行動を自己選択できたことを褒めるべきで、具体性を持って褒めることで子ども自身も「何に対して褒められているのか」を感じれるので、強化において非常に有効的でした。
以降、褒めたこどもは、おやつ後の行動が自身でインプットできるようになり、こちらの声掛けがなくとも、最適な行動がとれるようになりました。
応用行動分析学での「強化」は、行動後の結果が「褒められる」というポジティブなものであり、子どもが行動を繰り返しやすくなります。
ABAに期待できる効果
応用行動分析学では、ある行動とその前後の出来事や結果の関連を考えながら、身につけてほしい行動や気づきを促すことができる効果があります。
- コミュニケーションに問題があり、本人や相手に危害を招く可能性がある
- 癇癪などで周囲の人に影響を与える
- 特定の物事にこだわりが強く、集団行動などが苦手
上記のような発達障がいの特性を持ち、社会生活を送る中で問題となっている場合は、応用行動分析学による療育で行動の問題が緩和されるものと考えており、ASTEPの療育のアプローチの多くは、ABAを念頭に置いた手法により、有効性を確認しながら子どもたちを評価しています。
さいごに
ABC分析により、子どもの行動をよい方向へ修正する手法であり、行動を起こしたときの周囲の環境、他の人やモノについて細かく見極め、最適なアプローチを行うことが特徴です。
ABAを用いた支援は、問題行動を減らし望ましい行動を増やすことや、癇癪などの課題となる行動を修正する効果が期待され、自己肯定感を高めながら成長を促していくことができます。
同時に、周りの大人や保護者、支援者も負担が減り、効果的に支援をすることができます。
問題行動への対応の仕方も子どもによって様々で、子どもによっては時間がかかるケースもありますが、個々に合わせたアプローチにより「消去」と「強化」を使い分けて問題行動の解消に繋げていけるものと考えています。
また、子どもの療育は早く開始するほどよいと考えられています。
ABAを療育の方法として取り入れている施設はASTEPだけではありません。
放課後等デイサービスの利用を検討されている方は、ABAを実践してるかどうかのチェックをしてみるのもいいかもしれないですね!