大学では社会福祉学部に在籍、福祉心理を専攻し、某アパレルメーカーに就職
前職は公務員として11年間勤務し、1000人規模の職場で心理カウンセラーとして様々なお悩みを聞き、解決に尽力してきました。
ASTEPのブログをご覧の皆さま、こんにちは!嬉しい報せがあります。
ASTEPをご利用の受験生のお子さまが”受験合格”しました。
受験の合否について今か今かと待っていました。保護者からの連絡で「合格しました!」と連絡があった時、嬉し涙を浮かべる指導員やガッツポーズをする指導員も…私はというと、ホっと胸を撫でおろしました。
普段の生活での姿勢、学校生活では血のにじむ努力、ASTEPでは利用毎に受験を控えた個別の取り組みなど、本当に良く頑張りました!
「努力の軌跡」をお伝えするということで、具体的に受験を控える子どもにどのような支援を行ってきたのか?どんなことを伝えてきたのか?という部分をお伝えしていきたいと思います。
今後、受験を待ち受けているお子さまの”1つの成功の形”として参考としていただければと思います。
目次
受験生の背景
現ASTEPの児童発達支援管理責任者がもともと指導員として勤務していた事業所を通所されていました。
ASTEPを2021年2月に開所と同時に、ASTEPへやってきてくれた子どもです!いわば、ASTEPを利用していただいた”第1号”最初のお子さまです!
子どもにとって事業所が変わるということは非常に繊細なことです。また、受験まで1年を切る大切な時期にも関わらず、駆け出しの事業所であるASTEPを信じ、指導員を信じていただいたお母様には、感謝してもしきれない気持ちでした。
開所した当初は、利用者もなく集団活動もできない中、広いのに誰もいない静かな療育室で、ほとんどの時間をマンツーマンの個別療育を行っていました。
そんな背景もあり、受験当日に向けて計画を組み、”受験を控えた療育”を行ってきました。
具体的な取り組み
ASTEP開所と同時に利用を開始したSちゃんですが、今まで努力を続けてきた取り組みを、一部ご紹介していきたいと思います。
1年を通じて、本人の気持ちや時期的な特性を踏まえた取り組みを段階的に行ってきました。
SST(対人関係)
ソーシャルスキルトレーニング(以下、SST)として“対人関係”をテーマとして、継続した期間、理解を深めていきました。
Sちゃんは「言ってはいけないことと理解するも、ボーダーラインを超えると暴言が出てしまう」という特性を持っています。
Sちゃんのトレーニングでは、気持ちが沸点に達した時、受験で言うと面接時に分からない質問や練習していない質問が来た時に、表情や態度に出すことをグッとこらえることを重点項目として行ってきました。
イメージがしやすいよう、普段起こり得る怒りの場面を絵カードで相互に考えながら進めていきました。
進める中で、”面接における気持ちのコントロール”を一緒に考えていきました。「高圧的な言い方をされたとき」や「深く掘り下げられた質問」など、そんな時はどうするか?というのを実技形式も取り入れながら取り組んでいきました。
継続的に、怒りのコントロールを練習した結果、暴言は以前より少なくなってきています。受験前は少しナーバスになってしまい、暴言も多くなることもありましたが、すぐに非を認める言葉も多くなりました。
一緒に考えながらも、自分で解決策を見つけていくことに大きな意味を感じました。
SST(場面に応じた挨拶)
他者とのコミュニケーションの基盤となる挨拶の仕方や使い分け・意味を理解し挨拶を自ら進んで行える様になる事を目標として行いました。
Sちゃんについては、基本的な挨拶(ただいま・おはよう・さようなら等)についてはバッチリです。
ですので、Sちゃんについては違う視点で、”挨拶をされなかった時・挨拶をしてくれた時の気持ちを知ること”を重点的に取り組みました。
Sちゃんは「悲しくなる」と答えてくれますが、その後の自分の行動をどうすればいいのか?思考を深めていきました。
結果、Sちゃんは「もう一度聞こえるように挨拶をする」という答えを出してくれました。
これは、オープンキャンパス時に、学校関係者(先生など)に対して、自分から挨拶をすること。また、多くの受験生でごったがえす中、挨拶が届かない状況を想定して、その時に諦めるのではなく、自分から積極的にもう一度挨拶ができること…を狙いとしています。
オープンキャンパスは一人ひとりの子どもの言動・行動は学校側にくまなくチェックされています。受験という場だけという意味ではありませんが、常に挨拶というのは意識できる環境を設定していきました。
LST (気持ちの伝達)
ライフスキルトレーニング(以下、LST)で、気持ちの伝達、特にSちゃんは”感謝”について理解を深めていきました。
冒頭に、感謝の気持ちの伝え方を考えていきました。言葉で直接言ったり、手紙を書いたり、良い事をし返したり…様々な意見が出てきました。
Sちゃんに対しては特に「感謝の言葉+気持ち」という項目を重点的にお伝えしていきました。
「Sちゃんの髪型とても似合ってるね!」と言われたら「ありがとう」と言いました。それはそれで正解なのですが、LSTの中で「ありがとうございます。とても嬉しいです。」と言うのはどう?と提案しました。
感謝の言葉にプラスαで自分の気持ちを伝えると相手との距離が近くなるんだよ!と伝えると、LSTの取り組み以降、「感謝の言葉+気持ち」を伝えてくれる場面が多くなりました。
受験の面接時に、褒められた場面を想定して行ってきましたが、日常生活でも大いに気持ちを伝えてくれるようになり、今後に繋がる大きな成果が得られました。
LST(自己分析)
自己分析には色々な作業がありますが、Sちゃんについては、”自分の長所・短所を知る”という内容で思考を深めていきました。
自分の強みを理解し、言葉にできることを目標とするとともに、自身の特性への理解を促すこと目的として行いました。
活動の内容はちょっと置いときまして、指導員とともに考えた答えが出ましたので紹介します。
- 言われたことは最後までやり切ることができる。
- 高い集中力
- 場面の切り替えが早い
にたどり着くことができました。その後の個別療育の時間で、以上3つの長所を具体的に見つめていく作業を行っていきました。
どんなに深く質問をされても自信を持って力強く答えられるところまで精度を高めていきました。
結果、面接の場でも、この3点を自信を持って答えられたということで、成果があったものと考えています。
逆に、短所については、Sちゃんは、当初「怒りっぽい」という言葉を使っていたのですが、怒りっぽいというのはポジティブに捉えることが難しい理由で、再度一緒に考えていきました。
ポイントは”言い換えると長所になる言葉選び”です。
私は「神経質な部分がある」と提示しました。神経質でこだわりがあるという自身の特性の理解となる言葉にもなるとともに、神経質という言葉を裏返すと”几帳面・正確”と言い換えることもできます。
長所と重なる点もあるので、Sちゃんへ提案すると、スムーズに思考を深めていくことができました。
短所についても、面接の場で自信も持って答えることができました!
LST(トリセツの作成)
「今、自分のことを伝えるように言われても何を説明していいかわからない」という気持ちを、Sちゃんから私に伝えてくれたので「じゃあ自分のトリセツを作ろう!」と提案したことから始まった取り組みです。
自分自身が分からないために相手に伝えられず、理解してもらえないを解決するために、”トリセツ(取扱説明書)”を作成してきました。
発達障がいのトリセツ作成には、自分の特徴を理解できるだけでなく、実際にみてもらうことで「あなたはこういう人で、○○をサポートしていくといいのですね」と、その人にあなたを理解してもらうことができるなど多くのメリットがあります。
ここでの成果のイメージは、自己分析した内容を全体的に深めていけたことです。
自己理解の幅を広げ、”他の者に自分を伝える意味やスキル”を身につけていくことができました。
社会体験活動
本年度の夏休み期間を利用して、ASTEPの”社会体験活動”に参加をしました。
中学3年生という比較的早い時期に参加をしてもらった理由は、「社会とのギャップを知ること」が大きな目的でしたが、Sちゃんは職業学科を志望する(この時はまだ志望校は決まっていませんでした)志望し合格できるレベルにあることを見越して、実際の仕事を体験をしてやりきったという経験は、受験にとって大きな武器になると考えました。
こういった経験から言える言葉というのは重みもありますし、説得力も増します。
なかなかできない仕事経験を、自分の糧にすることができ、受験の場でアピールすることもできました。
番外編:ASTEPノート
ASTEPノートは、”その日の振り返り”を目的に、そのノートに書かれた内容をもとに、指導員が話を広げながら対話を行い、その中で質問をして回答を繰り返すことで、コミュニケーションスキルの向上を目的とした取り組みです。現在ASTEPで3名のお子さまが実践しています。
Sちゃんについても、早い段階でノートを作成していきました。利用毎その日の振り返りに併せて、受験を意識した内容(かなり幅は広いです)をノートに書き記して気持ちやスキルを記していきます。ノートに記しておけば読み返すこともできます。
合格という最高の結果は得られましたが、ASTEPを卒業する3月まで、伝えたいコトは山ほどあります。課題を選りすぐって今後も活用していきます。
さいごに
取り組みの一部をご紹介してまいりましたが、Sちゃんはその他にも、公共交通機関の利用についてのLST(高校通学のため)、見通しを持つためのトレーニングなど、たくさんの課題にチャレンジしてきました。
保護者からの連絡で、いち早く合格の報せが届きました。
合格後のASTEP利用日、SちゃんはASTEPに帰ってきて来るなり「〇〇高校に合格しました!」と私に対し、満面の笑みで報告をしてくれました。(涙が出そうでしたが…ガマンしました)
その後、合格後初めての”ASTEPノート”作成に取り掛かりました。
私から伝えたことは3点です。
- ゴール=新しいスタート
今年一年受験のために頑張ってきて最高の形でゴールを迎えることができました。ゴールテープを切って終わりではなく新しいスタートであること。新しい形で努力を続けよう!すると学校が何倍も楽しくなるよ! - 感謝の言葉を伝えよう!
合格したのは紛れもなくSちゃんの頑張りがあってこその結果!頑張りを後押ししてくれた人はいる?と聞くとすぐにノートに記しくれています。言葉で感謝の気持ちを伝えよう!感謝の言葉を言われて嬉しくない人はいないことを伝えると、「明日、先生ひとりひとりにありがとうと言います!」と言ってくれています。 - 恩返しは努力する姿を見せること
背中を押してくれてありがとう…終わり…ではなく、お返しをしよう!という話をしました。違う言葉で「恩返しって言うんだけど聞いたことあるかな?」と聞くとSちゃんは「聞いたことあります!」と言ってくれています。Sちゃんの背中を押してくれた人たちへの恩返しは高校に行っても新しい目標を見つけて努力する姿を見せることだよ!と、伝えました。
この言葉を真剣に考えてくれたのか、ASTEPから帰るとお母さんに対し「これからいっぱい恩返しするからね。」という言葉を掛けたそうです。
私たち大人(保護者や支援者)は、子どもの頑張りや成長を後押しすること、背中を押してあげることができますよね!
そのやり方というのは、それぞれの子どもさんによって様々で正解の形というものはありません。
気持ちをバックアップするのも支援、具体的なスキルを教え伝えることも支援、総じて”社会自立のための一助”です。
私を含め、ASTEPの指導員は、一人の子どもの”将来”をお預かりする責任感や使命感を強く感じています、その気持ちの根底には、それぞれの子どもの成長を後押しする気持ちがあります。
少し背中を押せば一歩が踏み出せたり、後ろにもたれかかって身動きが取れない状況のお子さんもいらっしゃいます。
身動きが取れない姿勢から動けるように促したり、あえて背中を押さず、自力で一歩を踏み出す場面など、本当に様々な状況が存在します。
様々なケースを見極めながら試行錯誤を繰り返すことになりますが、長い目で見た効果的な支援というものをこれからも追求していきたいと思います。
おめでとうございます☺
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