自閉症のあるお子さん、「こだわり」が強く出ることがありますよね。
一度スイッチが入ると止まらなくて、やめてほしくて声をかけたら、また最初からやり直し…なんてこともあったり。
「あちゃ~声かけちゃったからかな~」
そんな経験、支援に関わっていると誰でも一度はあるんじゃないかなって思います。
私がまだASTEP1年生で支援の現場に出たばかりの頃
あるお子さんが、険しい顔でASTEPに来たんです。
そしたら、いきなりロッカーの中身をひとつずつ床に広げ始めてしまって。(お友達の荷物も)
まるで「全部出さなきゃ気が済まない!」っていう勢いで、止まらなくなっちゃったんですよ。
最初は「どうしたの?」って声をかけたんですけど、逆に行動が激しくなってしまって。僕はどう止めていいかも分からず、ただ見ているしかありませんでした。
そして、それは次の日も、そのまた次の日も続いていきました。
でも、しばらくすると表情が少しずつやわらかくなっていって。ただ、散らかった荷物を自分で片付けるのはちょっとイヤそうにしてました。
そのお子さん、実はぬいぐるみがあまり好きじゃなかったんですよ。
だからある日、ちょっと気分が落ち着いていそうなタイミングで、「今度から、広げるのはぬいぐるみにしてみる?」って、軽いノリで提案してみたんです。
そしたら、それがうまくハマって、ぬいぐるみをミリミリと横との調和を確認しながら広げるようになりました。
これで荷物が混同することがなくなるし、拾うのもラクだし、ちょっとした遊びみたいな感じで楽しそうにしてたんです。で、そのうち「もういいや」って感じで、何も言わなくてもやめていきました。
無理に「やめなさい」と言ったわけじゃなくて、「こっちの方法にしてみる?」って、やり方を変える提案をしただけ。
その“ちょっとした変更”が、うまくいったのかもしれません。
じゃあ、なんでそのお子さんはあんなにこだわってたんでしょう?
僕は、それって「心のSOS」だったんじゃないかと思うんです。
もしかしたら、家から施設に来るまでに何かイヤなことがあったのかもしれない。不安やモヤモヤがあって、それがあの行動として出ていたのかもしれません。
そうやって何かにこだわることで、不安が少しでもやわらいで、「安心できた」「落ち着けた」っていう体験があったとしたら、そのこだわりと称される行動は、本人にとって必要なものだったのかもしれません。
実は、僕たちも似たようなこと、けっこうやってるんですよね。
お気に入りの音楽を聴くとか、決まった順番で朝の準備をするとか、同じ道を通らないと落ち着かないとか。他の人に迷惑をかけない範囲でやってるから、目立たないだけで。
でも、いざそれを変えようとすると「え?これでいいのかな…」って、急に不安になる。それって、まさに“自分を落ち着かせる行動”なんですよね。
自閉症のお子さんのこだわりって、ちょっと変わった形に見えることもあるんで、支援者側が「なんでそんなことするの?」って不思議に思ってしまう。
そうして、「こだわり」というラベルを貼られて、「やめさせなきゃ」って気持ちになってしまうこと、あると思うんですよ。
でも、もしその行動に「心を落ち着ける」という意味があるのだとしたら?それなら、無理に止めるんじゃなくて、そっと見守る方がいい場面もあると思いませんか?
もちろん、中にはどうしても困ってしまうこともありますよね。たとえば、ティッシュを何枚も引き出して、机の上に積み上げてしまうとか。
そういう「消耗品がすぐになくなる」「安全面が心配」な行動って、支援する側としても、やっぱりなんとかしたくなります。
だからこそ、「何に不安を感じてるのかな?」って考えてみてほしいんです。
行動が始まってから止めようとすると、逆効果になることが多くて、さらにその行動に固執してしまう傾向があるように見えます。
だからこそ、普段の様子から「何がイヤなのか」「何に不安を感じやすいのか」そういうポイントを探って、事前にフォローしていく支援が大事なんです。
もし話せる方であれば、「どんなときに安心できる?」「何が嫌だった?」って、一緒に考えてみるのもいいかもしれません。
そして、こだわりを別のものに変えていく場合も、無理に変えるんじゃなくて、タイミングを見て、「これならどう?」と、本人が安心できるような提案をしてみてほしい。
どちらにしても、その行動の真っ最中に止めようとするのは、あまりうまくいかないことが多いので、他のタイミングを狙ってみるのがいいと思います。
ただ、もしそのこだわりが危険につながるような場合は、できるだけ早めに別の安心できる方法に切り替えていけるといいですよね。
「こだわり=悪いこと」って思われがちだけど、その前に、「この行動にはどんな意味があるんだろう?」って考えてみる。
そうやって受け止められる支援者でいたいなと、僕自身は感じています。
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