自閉症は、人との関わりやコミュニケーションを苦手としたり、ある事に対して強いこだわりを持ったりするという特徴をもつ障がいです。
自閉症の原因はまだ解明されていませんが、遺伝的なものであるという考えが多くを占めています。
子どもが自閉症と診断されたら、あるいは自閉症を抱える子どもと接することがあったら、どのような対応や支援を行えば良いのかを考えていきましょう。
目次
自閉症について
自閉症は、3歳くらいまでに現れることが多いとされていて、以下のような特徴があります。
① 他人との社会的関係の形成の困難さ
② 言葉の発達の遅れ
③ 興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
先天的な脳の機能障害であるとされていますが、原因解明には至っていません。
自閉症スペクトラム症とは?
自閉症スペクトラム症とは、自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群の総称です。
① 自閉症
3つの特徴として、対人関係が難しい・言葉機能の障害・範囲の狭い興味や関心が強いという事が言われ、知的障害を伴います。
② 高機能自閉症
自閉症の3つの特徴はありますが、自閉症とは違い知的障害を伴わない障害です。IQは、71以上の方を指します。
③ アスペルガー症候群
自閉症の3つの特徴がありますが、言葉の発達に遅れは見られず、高機能自閉症と同様に知的障害を伴いません。
自閉症の5つの特性
自閉症には、対人関係・社会性やコミュニケーション能力に障害があり、物事に強いこだわりがあります。感覚が過敏であったり、鈍感であったり、柔軟に思考することや変化に対処するのが難しいこともあります。
代表的な特徴についてご紹介していきます。
こだわりが強い
自閉症というと、こだわりが強いという特性がまっさきに思い浮かぶ事が多いです。
頑固や、性格的なものではなく障害から起こる特性です。
毎日同じ時間に同じことをする。同じ道を通って移動するなど、一種のルーティンを強く実行しようとする特性があります。
見通しという言葉も使いますが、次にする行動がその方の中で決まっていることから崩れてしまうと、混乱しパニックになる事もあります。
また、どうしても実行しようとして自傷(自身を傷つける行動)をしたり、他害(他者に手をあげたりする事)になる場合もあります。
コミュニケーションが難しい
特徴の中でも、社会生活上の困難さが表れる特性です。長い文や言葉を理解する事が難しい場合が多くみられます。
言葉がうまく話せる方もいますが、単語で意志を表出する方も多いです。
そのため、支援者から長い言葉で話しかけられると混乱してしまう事があります。また、相手の表情を読み取ったり、気持ちを想像して考える事も苦手です。
また、一方通行なコミュニケーションになってしまう事も多くあります。
視覚的な情報が優位
言葉によるコミュニケーションが苦手な方でも、紙に書いたりする事で理解できる方も多くいらっしゃいます。
そのため、掲示物にくぎ付けになって動かなくなってしまう事もあります。
自閉症の方の代表的な支援方法として、TEACCHというものがあります。
TEACCHとは、Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Childrenから取った造語です。
アメリカのノースカロライナ州立大学で作られ実践されているプログラムです。
日本でも、自閉症の方の支援に活用されたり自閉症の方の支援に特化した事業所もあります。
絵・文字・写真で視覚的に分かりやすくコミュニケーションを図る方法も実践されています。
感覚が過敏
音・皮膚感覚等の感覚が過敏な特性もあります。
自閉症ではない人が気にならない空調の音・冷蔵庫等のモーター音・街の様々な音を不快に感じる方が多いです。
また、突発的な大きな音への過敏を軽減させる為に、イヤーマフと呼ばれるヘッドホンの様な音を小さくさせる器具を使用する方もいます。
光に対しても独特な感覚を持つ方もいます。
日の光や照明に手をかざしてひらひらとさせる光景を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
感覚から来るこだわりで、水を流しっぱなしで手を水に当てている方もいます。逆に、雨の感覚が苦手で雨に当たるのを非常に嫌がる方もいます。
記憶力が良い
記憶力が良い方も多くいます。
遡って、何年も前の何月何日は何曜日と完ぺきに覚えている方もいれば、スポーツの実況を一字一句覚えてマネできる方もいます。
また、部屋の物の位置が少しでも違っていることに気づき、元あった場所へ移動する事もあります。
記憶力が優れているがゆえにこだわりが強くなるという一面もあります。
自閉症の方の支援の6つのポイント
自閉症の子どもと接する場合、一般的な方法が通用しないことが多くあります。
そのため、子どもに対する接し方も個々に違ってきます。ここでは、自閉症の子どもに共通して行える接し方をご紹介していきます。
視覚的なコミュニケーション
長い言葉は伝わりにくい為、視覚的なコミュニケーションが有効です。
自閉症の方は、絵・文字・写真が有効ですが、急に支援を行うと混乱してしまう事があります。
その方にはどの方法が良いのか、事前に評価して伝わりやすいコミュニケーション方法を確立する必要があります。
個別化とも言われますが、公園の写真一つとっても実際に行く場所の写真なのか、一般的に公演をイメージできる写真で良いのかを考察する必要があります。
見通しを立てるために、1日の流れ(行く場所や行う行動)を視覚的に縦に並べてその方が分かる場所へ掲示する方法もあります。
非言語表現(ノンバーバールコミュニケーション)と呼ばれるコミュニケーションも有効です。
してはいけない事がある場合は、両手で×を示し伝える事で理解する場合もあります。
言葉でのコミュニケーションは、キーワードを単語で出来るだけ端的に伝える事が重要です。
言葉はシンプルかつ端的に
自閉症スペクトラムの特性を持つ子供は言葉を字義通りに受け取りやすいため、遠回しな表現や慣用句・代名詞などを使って伝えると混乱することがあります。
例えば、「真っ直ぐ帰りなさい」を「寄り道をせずに帰りなさい」や「猫の手も借りたい」を「忙しい」と置き換えることができないのです。
そのため、何かを伝える時には伝える側が配慮する必要があります。ゆっくりと短い言葉で具体的に伝えるようにしましょう。
遠回しな表現や慣用句・代名詞などを使って伝えないように注意します。また、同じことを繰り返し伝えるときには伝え方を統一することも大切です。
活動の区切りを明確化
自閉症スペクトラムの特性を持つ子供は時間がどれくらい経ったのかを感じることが苦手な場合があります。
いつ終わるのかを分かりやすく伝えることで安心して活動に取り組むことができるようになります。
例えば、「このプリントを2枚したら終わり」「時計の針がこの形になったら終わり」などと活動の終わりが分かるように伝えてあげましょう。
楽しさを全面に出した活動
自閉症スペクトラムの特性を持つ子供はその特性のために学習に取り組むことに難しさを感じることがあります。
できるだけ楽しく取り組めるように、電車が好きな子などでは算数の問題に電車を使用するなどの工夫を通して、楽しみながらスモールステップで取り組んでいき「できた!」という達成感を育んでいきましょう。
パニックに対して冷静に対応
閉症スペクトラムの特性を持つ子供は想像力を発揮することが難しかったり感覚過敏のために様々な刺激を受け続けたりすることでパニックを起こす場合があります。
パニックに対してはできるだけ注目せずに静かな場所へ連れて行き落ち着くまで待つようにしましょう。
パニックが収まったら「よく我慢できたね」と褒めるようにし、叱らないが譲らないという態度を貫くようにしましょう。
子供にあった療育を受ける
達障害の特性を和らげることを目的とした「療育」はたくさんあります。
代表的なものに「TEACCH(ティーチ)」「感覚統合療法」「ABA(応用行動分析)」などがあります。
TEACCH(ティーチ):自閉症スペクトラムの特性を持つ人とその家族のために生活全般における総合的・包括的なプログラムのことです。
感覚統合療法は、適した刺激を与えることで偏った感覚が正しく働くようにすることを目的としたリハビリテーションの技法の1つです。
また、ABA(応用行動分析)は、その子の行動をよく観察して適切な環境を整えたり、関わりを持ったりしながら「好ましい行動」を増やし、「好ましくない行動」を減らしていくものです。
以下、ABAの参考ブログについてはこちらをご覧ください。
[blogcard url=”https://www.astep-kyoto.com/aba-6410″]
まとめ
ここまで、自閉症の定義・特性・関わり方のポイントを紹介してきました。
自閉症であれば、特性はありますがその方によって特徴の出方は本当に様々です。事前に準備していても、社会で生活する中でその方の見通しが崩れる事は多々あります。
その方に危険や不利益が及ぶ場合でなければ、強引に制止したりせずに、寄り添って支援を行いたいものです。
自閉症は、こだわりが強くてコミュニケーションが苦手と捉えるのではなく、特性や支援ポイントを理解した上で接すれば困難さは軽減され、生きにくさも緩和されると期待しています。