ASTEPのブログをご覧のみなさま、こんにちは!
京都府向日市の放課後等デイサービスASTEP、児童指導員、すやまさほです。
久しぶりのブログ更新となりました。
今回は、私が実際にASTEPで起きた『子どもの問題行動とその対処法』について、手段を1つご紹介したいと思います。
それは『無視』をすることです!
「え?」とお思いになった方も多いかもしれませんが…意外な効果があるのです!
この方法がどの子どもにも効く…というのは性格や特性にもよるところはあるかと思いますが、選択肢の1つとして認識いただければと思います。
ではいってみましょう!
目次
困った行動への対処
結論から言いますと…
え?無視するの?それは支援を放棄してるんじゃない?…そのような言葉や想いがビシビシと伝わってきています…
これは、ただ単に問題となる行動を無視して終わり、ということではありません。
子どもの困った行動というのは、誰が困っているのか?というところを考えると、それは親御さんであったり、ASTEPでいうと指導員(大人)ですよね。
子どもたちからすると、何ら困ってもいませんし、遊びの延長や遊んでほしさ故の思いからくる行動がほとんどなのです。
そういった部分を理解した上で、問題となる行動を抑制する方法、それが『無視』なんです。
実際にASTEPでの事例をいくつか挙げて紹介していきます。
ケース① とにかく物を便器に入れる
A君は、自分が見たことのない真新しい物を見つけると、それに興奮を覚え、便器の中に投げ入れるという行動が見られていました。
新しいマジック、新しく取り入れたおもちゃ、指導員の私物、製作活動のため事前に指導員が見本として作ったものなど、自分が興味のあるものはとにかく便器に入れる、そんな状況でした。
そんなA君に対し、ある時期までは…
指導員
「あっ!止めてって言ったでしょう!」
と制止を促すような言葉を掛けていました。
しかしA君は、指導員の困った顔を見て笑顔でニヤニヤ…便器から拾い上げてからキレイに拭きあげる様子を見てシメシメ…といった様子です。
これらの行動が日常化してしまっていたため、対応を変え、今回ご紹介した『無視』を実践しました。
ある日、いつものごとく事務室にやってきて目ぼしい物を探し始めます。おもちゃを見つけたA君は、そのままトイレに行き、便器に投げ入れます。
A君
「便器に入れたよ!見に来て!(という様子)」
と言わんばかりの表情でこちらにアピールしてくるA君、しかし、私たち指導員は相手にしません。
A君
「んん?いつもと様子が違うぞ…」
という様子で、こちらに駆け寄ってきてしきりにアピールをするA君、手を引いて連れて行こうとします。しかし、指導員は無視の一点張り…
A君
「あれれ?反応がないな…」
という表情をしながら、お気に入りのおもちゃで遊び始めました。
様子や表情などから推察すると、A君は『やり取り遊び』がしたかったのではないかと考えました。
便器に物を入れると、慌てる指導員の反応を楽しむ、そんな行動原理です。
指導員が無視をして現場に来なかった時点で、A君の中でのやり取り遊びは成立せず、結果…
A君
「うーん…これでは遊べないな…」
と思うわけです。
しかし、A君の問題行動を含めたアピールを無視して終わり…では、自覚をさせることができません。
「これでは遊べないな…」と、次の遊びに集中し始めた頃合いを見て、指導員がA君に言葉を掛けに行きます。
指導員
「入れるの止めてくれたんだね!おもちゃが水に濡れちゃうと使えなくなってお友達が困ってしまうんだけど、やめてくれて本当に嬉しいし助かったよ!ありがとう!」
このように、好ましい行動に至った過程を伝えたのち、感謝の感情を伝えました。
そんなやり取りを日をまたいで5~6回ほど繰り返すうちに、A君の問題行動はスッとなくなりました。
その後、何度か物を入れて遊びたいという欲求が見られたのですが、自制する様子が見られました。
これは、A君に対し『これをすると壊れてしまい困らせてしまう』という感情をインプットした上で褒めるという関わりを繰り返し行うことで、問題としていた行動が好ましい行動となったのです。
ケース② 乗車姿勢が良くない子ども
B君は、送迎中の車内でシートベルトを外して、後ろ向きに座り、後方の車を観察するという行動が見られていました。
このケースでも、ある時期までは…
指導員
「ちゃんとシートベルト締めないと危ないから、しっかり座って!」
という言葉を掛けていました。
でも、後ろから迫りくる車を見ることに、ある種の『こだわり』を持っている状況で、こちらの注意に耳を傾ける様子はありませんでした。
注意に耳を傾けてほしいがために…
指導員
「もうすぐ槍(人差し指)が飛んでくるよ~!」
と言って、停車中にお腹をこそばせるような関わりをしていた時期もありました。
そんなやり取りがツボに入ってしまう結果となり…
B君
「もっと槍してー!槍が飛んでくるー!」
といったやり取りに発展…問題行動を遊びだとB君に認識させてしまった上に、喜びの刺激を与えてしまい、好ましくない行動を助長してしまうような形となってしまいました。
ここで『無視』を実践したわけです。
この日も送迎で、後ろ向きに座り後方の車を観察しながら「槍は?」と要求してくるB君…
その後もチラチラとこちらを見ながら、しきりに遊びを要求してくるB君に対し、指導員は『無視』です。
反応がなく諦めたところで、シートベルトを締め直し、着座をしたB君、その好ましい行動に切り替えたことい対して…
指導員
「運転はみんなの命を守っているものなの。B君が後ろ向きに座ってしまうと、運転に集中できなくなって事故に遭うかもしれないの。これはとっても危険な行動なんだよ。でもB君は今、シートベルトを締めてちゃんと座ってくれたね!とっても助かったよ!これで安全に運転することができるよ!ちゃんと座ってくれてありがとう!」
このような形で、良い行動とその過程、そして感謝の気持ちを、B君に伝えました。
それ以降、B君は後ろ向きに座ることなく、また、運転中に槍(遊び)を要求する行動がなくなりました。
その道中、衝動的に後ろ向きになりたい欲求が見られてはいましたが、結果、家まで安全に着座することができました。
別日、褒められたことが効いたのか、後ろ向きに座る姿勢を自制しようとする姿が見られるなど、一定の効果がありました。
まとめ
- 問題行動は親が困っているのではなく、困っているのは子ども自身!
- 好ましい行動が見られるまで、無視を続ける!
- 好ましい行動が見られたときは、その行動と大人の感情を伝え、過程を褒める!
困っている行動を無視し、その行動がなぜ良かったのか(困っていたこと、嬉しい感情など)という、好ましい行動に至った過程を褒めてあげることで、好ましくない行動が減る1つのきっかけとなります。
ASTEPでの事例以外にも、日常の中で、発達に凸凹がある子どもの問題行動があるかもしれません。
そういった子どもに対して、私たち支援者(親)は、存在を無視するのではなく、行動(行為)に対して無視をして、褒めるという準備をすること。
※子どもの存在や問題行動以外の部分を無視すると、それは単なるネグレクトです。無視を使う状況の判断を見誤らないようにしてください!
そして、褒めるときは結果ではなくその過程や理由を含め、支援者の感情(嬉しい気持ち)をストレートに伝えることが大切です。
もし、こういった場面があれば、是非試してみてくださいね!
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